芥川賞受賞作品

【あらすじと感想】『破局』第163回芥川賞受賞作

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著者:遠野遥
出版社 ‏ : ‎ 河出書房新社
発売日 ‏ : ‎ 2020/7/4
単行本 ‏ : ‎ 148ページ

『破局』あらすじと感想

破局』は第163回芥川賞を受賞した小説作品である。

主人公の陽介は、数か月後に卒業を控えた大学四年生。彼は公務員試験の勉強に励む一方で、母校のラグビー部の後輩のコーチを務める。その合間では、一般の就活に励む友人と連絡を取り合ったり、恋人と泊りがけのデートをしたりと充実した日々を送っていた。

そんな陽介が一人の少女と出会い、関係を深める中で、徐々に思い描いた未来への道を外れていく――。

理性的な言動を見せる陽介が些細なことをきっかけに、少しずつ感情的になり身を持ち崩していく様子は読み手に人としてのありかたを考えさせる。

また、物語の途中に挟まれる陽介の友人や恋人の長い語りが陽介の人生と交錯していくシーンも印象的だった。

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著者:遠野遥
出版社 ‏ : ‎ 河出書房新社
発売日 ‏ : ‎ 2020/7/4
単行本 ‏ : ‎ 148ページ

『破局』遠野遥について

著者の遠野遥(とおの・はるか)は1991年神奈川県生まれ。2019年に『改良』で第56回文藝賞を受賞し作家デビューする。

その後2020年に『破局』で平成生まれ初の芥川賞を受賞。

2021年に『教育』で第43回野間文芸新人賞候補となった。

著者は受賞時のインタビューで「破局』全編に伝えたいメッセージというのは特に込めていません」としつつも「ひとつでもこの作品で伝えたいことを挙げろと言われたら、『音を立てて食べるのはやめよう』ということになりますね」と作中のエピソードを挙げながら語っている。

まとめ

本作は著者の得意とする平易で余白のある文体で描かれており、普段文学を読みなれない人にも入りやすいだろう。

主人公の陽介はしばしば「善良な人間」としての振る舞いを意識しているようだ。しかし、理性的によいことを選んでいるつもりの陽介もエゴや欲を持つ人間で、それゆえに間違えたり、周囲との軋轢が生まれたりしてしまうこともある。

途中までだったら車で送っていってもいいと佐々木は言ったが、駅前で何か食べていくからと断った。この男の顔をこれ以上見ていたら、私は何をするかわからない。

(『破局』P114)

感情的な判断による誤りはやがて陽介本人に収束し、順風満帆な彼の人生に影が落ちることになっていく。そんな本作は、人としての在り方に悩む10代や20代の若い世代に読んでほしい一冊である。

第163回芥川賞のダブル受賞作である『首里の馬』や候補作の『赤い砂を蹴る』『アウア・エイジ』、本作と同年の第163回直木賞受賞作の『少年と犬』などもあわせて読んでおきたい。

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著者:高山羽根子
出版社 ‏ : ‎ 新潮社
発売日 ‏ : ‎ 2020/7/27
ペーパーバック ‏ : ‎ 158ページ

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著者:馳星周
出版社 ‏ : ‎ 文藝春秋
発売日 ‏ : ‎ 2020/5/15
ハードカバー ‏ : ‎ 308ページ

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七篠ナナ
富山の文字書き/絵描き
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